【コロナ新時代への提言】はとバス 社長 塩見清仁氏


塩見社長

新たなビジネスモデルの模索

 3月末に緊急事態宣言が明けたと思ったら、すぐに、まん延防止等重点措置の発出、そしてまた緊急事態宣言が発令された。桜観賞コースなどの運行再開と英国生まれの新型2階建てオープントップバス「エクリプス ジェミニ3」の導入によって、弾みを付けようとしたまさにその時であった。

 当社は創設以来の最大かつ最長の難局にある。売り上げは前年比1割にも満たない。赤字幅がかなり膨らんだ。一刻も早く止血しなくてはいけない。PL、BSともにかなり傷んでいる。明けない夜はないと言われるが、明けない夜もあるのではないかとさえ思ってしまう。長崎の鐘の永井隆先生の「どん底に大地あり」ではないが、大地があれば踏ん張れると思ったら、どこまでがどん底か分からず、大地にたどり着けない感じだ。Go Toトラベルが感染拡大の原因との明確なエビデンスはないものの、人々の気持ちは溶けず、景気の気、マインドがとても観光に向かない。Go Toトラベルが悪者の代表になってしまい業界全体が苦しんだ。

 しかし、いつまでも雇用調整助成金に頼り、手をこまねいているわけにはいかない。アルコール消毒、検温、除菌コーティング、車内消毒、清掃など従来からのものに加え、CO2の見える化なども取り入れ、徹底した感染防止対策のうえ、お客さまの需要に応えていきたい。また、お客さまには、他のお客さまを守るためにも、検温、マスク着用の徹底などのご協力をいただき、安心してバス旅行を楽しんでいただきたい。

 ウィズコロナ下にあっては、地方のお客さまの回復は難しいだろうから、東京、首都圏の方に、近場でのご旅行を楽しんでいただきたい。いわゆるマイクロツーリズムの需要には的確に応えていきたい。雇用調整助成金には感謝している。運転士などは慢性的な人手不足なので、雇用はしっかりと守っていきたい。そのうえで、適正な事業規模、利幅の小さい仕事は見直すなど新たなビジネスモデルを模索していきたい。

 ポストコロナ下にあっては、時間差はあるがインバウンド含めて、必ず観光需要は戻る。その時にわれわれのような担い手が需要に応えられなくなってしまっていたら元も子もない。今はじっと耐えながら一刻も早く止血し、財務の強化を図っていかなくてはいけない。

 とにかく、政府等には科学、ファクトに基づいたコロナ対策を望む。風邪やインフルエンザとの違い、何が原因で、どこで感染しているか。飲食や観光が原因なのか、飛沫(ひまつ)なのか、とにかく科学でエビデンスを明らかにし、対処してもらわないと、ワイドショーの情報だけでは、いつまでも人々の気持ちは観光に向かない。われわれは、必ず戻るであろう旺盛な観光需要に迅速に応えられるべく、業界全体で力を合わせ、その準備に万全を期さなくてはならない。明けない夜はないのだから。

 
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